雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

中西 モトオ 『鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々』

江戸時代。鬼の跋扈する世界を舞台にした伝奇小説です。山奥のたたらばの集落、葛野には「いつきひめ」と呼ばれる巫女がいました。巫女の生肝は鬼たちにとって不死の妙薬。巫女の守護には代々、巫女守という者が当たります。 当代の巫女守は、幼少期に妹とと…

三浦しをん 『神去なあなあ日常』

映画Wood Job!の原作にもなった本作。かなり今更感がありますが読んでみました。 主人公は高校を卒業したばかりの今時の都会の少年・平野勇気。高校を卒業して、進学するわけでもなく、とりあえずフリーターにでもなって適当に生きていくか、と考えていた彼…

犬塚 惇平 『異世界食堂1』

街の小さな洋食屋さん「洋食のねこや」。 そこを訪れる一風変わった人たちを中心にしたオムニバス形式の小説です。平日のランチ時には近隣のサラリーマンたちの胃袋を満足させるその店は、表向きは土日が定休日。しかし実は、土曜日は特別営業日なのです。何…

今村 翔吾 『夜哭烏 羽州ぼろ鳶組』

ぼろ鳶シリーズの第2作目。 再び時代小説に戻ることにしました。1巻で火喰鳥としての情熱と矜持を取り戻した松永源吾ですが、そんな彼が守りたいとする江戸に不穏な火事が発生します。江戸の火消しは、士分の火消し隊が太鼓を打ち、その後に町火消しが半鐘を…

今村 翔吾 『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』

最近出会って、一気にお気に入りの作家になった今村翔吾による青春小説です。 こんなテーマも書いているんだと読んでみました。主人公である大塚春乃の夢は、華道の全国大会「全国高校生花いけバトル」に出場すること。 高校二年生になった今は、自ら華道同…

稲垣 栄洋 『生き物の死にざま』

さまざまな生き物の生き残り戦略を書いた本です。といっても、個体としてではなく種としての遺伝子を残すための戦略です。 生き物たちにとって最優先事項は、自分の遺伝子を子供へ繋げることであって、それにともなって自分たちが命を落とすことは仕方ない。…

しめさば (著), ぶーた (イラスト) 『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』

なんだか最近話題になっているので読んでみました。主人公の吉田は26歳のサラリーマン。彼は5年にわたり想い続けていた先輩社員の後藤さんに振られ(というか、彼氏がいると言われ)、同僚を強引に誘ってのやけ酒の帰りに、道端でうずくまる女子高生を見つけ…

安宅 和人『イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」』

知的生産を効率的に行うためには?をテーマにした一冊です。それは、ライフハック的な一分一秒の余裕を絞り出すための効率化ではなく、問題の本質を見極めて、その本質に向けて進んでいくことである、と著者は書きます。プレゼンのための資料集めにしても、…

近藤 史恵『茨姫はたたかう』

合田整骨院シリーズの続編です。このシリーズのテーマは、世の中で息苦しくも生きている女性に着目したものなのですね。今回のヒロインは誰にでもいい顔をしてしまうがゆえに、同性からは嫌われ、異性からは勘違いをされがちな、優等生タイプの久住梨花子。 …

冲方 丁『戦の国』

戦国時代を駆け抜けた武将たち。 それぞれの想いと生き様を描いた短編集です。織田信長にはじまり、上杉謙信、大谷刑部、小早川秀秋と、有名どころばかりが続くので、どういう経緯の小説なのかと思ったら、歴史ムックの特集だったようです。 有名な武将を主…

ぱんだにあ『ねこようかい』

ザ・癒し。 表紙が可愛らしくて思わず買ってしまい、そこからさらに続編続編へと手が伸びて……猫をベースにした妖怪「ねこようかい」が活躍(?)する4コマ漫画です。 つるっとした顔を見せて、人間を驚かせて喜ぶのっぺらぼうの猫。 首を伸ばして遊ぶ、ろくろ首…

宮澤 伊織『裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト』

ネットでささやかれる都市伝説――ネットロアを題材にした小説の第二弾です。主人公である空魚[そらお]は、趣味の廃墟探検の過程で入り込んだ【裏世界】への探検に夢中になっていました。 【裏世界】はネットロアの怪異達が住まう世界で、こっちの世界の常識も…

こざき 亜衣『あさひなぐ』

ついについに感動の最終巻を迎えてしまった漫画。 女子高生たちによる熱いスポコンの物語が幕を下ろします。映画化もされたので、もはや説明の必要もないかもしれませんが、簡単にストーリーを。 二つ坂高校新入生の東島旭[とうじまあさひ]は、元美術部で根…

大森藤ノ 『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 16 』

私がずっと追い続けているシリーズのひとつです。 今回のメインヒロインは、行きつけの酒場の店員で、ベルの成長をお弁当とともに見守り続けている美少女シル。全てはベルの所属するヘスティアファミリアのホームに、シルからの手紙が届くところから始まりま…

高野 秀行『謎のアジア納豆  ―そして帰ってきた〈日本納豆〉―』

日本人が独自の文化として認識し、ある意味誇りのようなものさえも抱いている納豆。 しかし、実はアジア各地で納豆は広く食べられているそうです。では、日本と他の地域で食べられている納豆との違いは何なのか? そもそも、納豆の定義とは? という唐突な疑…

白鳥 士郎『りゅうおうのおしごと!』

主人公のチートさでは藤井君に抜かれてしまったと名高い本作。 いかにもライトノベルチックな美少女(幼女)の表紙と設定に敬遠していましたが、読んでみたらなんとも面白い小説ではないですか。主人公の九頭竜八一[くずりゅうやいち]は、十六歳にして竜王の…

丸山 宗利『きらめく甲虫』

虫の本です。タマムシに代表されるように、甲虫には美しい金属光沢をもつ種が多く存在します。 その甲虫の美しさを堪能すべく作られたものが本書です。博物館に飾られた標本のように、色も形も様々な甲虫が各ページいっぱいに並べられたさまはある意味壮観で…

冲方 丁『マルドゥック・アノニマス 5』

待ち望んでいた新刊です。囚われの身になっていたウフコックを救い出したバロットは、ようやく会いたくて会いたくて仕方がなかった愛しいネズミとのパートナー関係を再開しました。 規格外すぎる一人と一匹の快進撃は相手がくそ野郎であればあるほど小気味よ…

草野 原々 『最後にして最初のアイドル』

この可愛らしい表紙につられて購入した人は後悔するかもしれません。 早川書房なので、SFだろうとは思っていましたが、初音ミク的なものを想像していたのに対して、なんじゃこれはとんでもない(誉め言葉)。主人公はアイドルにあこがれる普通の少女、古月み…

白鷺 あおい『ぬばたまおろち、しらたまおろち』

創元ファンタジイ新人賞の優秀賞受賞作(第2回)とのこと。岡山の田舎の村で暮らす深瀬綾乃には、四年前に事故で両親を失ったという過去があります。 育ての親にも内緒の彼女の秘密、それは、白蛇(というより大蛇)のアロウの存在。綾乃が岡山で暮らすよう…

京極 夏彦 (翻訳), 東 雅夫 (編集)『稲生物怪録』

百本のろうそくを前に、怖い話をひとつするたびに1本ずつろうそくを吹き消す。 百話目が終わって真っ暗になったとき、不思議なことが起きる。有名な話ですが、実際にやってみた人はあまりいないのではないでしょうか。主人公は、度胸試しとしてこの百物語を…

今村 翔吾『童の神』

ああ、これはいい。 時代小説でお気に入りの作家を見つけてしまいました。以前、『火喰鳥』を読んで知らない作家だと思っていたら、本屋に平積みされているほどに有名な人だと知って姿勢を正して読んでみました。 本作は角川春樹賞を、審査員の大絶賛のもと…

塙亘之、中村計『言い訳 関西芸人はなぜM-1で勝てないのか』

実力派漫才コンビとして確固たる地位を築いているナイツですが、意外にも、彼らはM-1での優勝経験はありません。 何度も挑戦しては優勝に手が届かずに終わる。それでも挑戦し続けたM-1への思いと、漫才への思いがあふれたインタビュー形式の本です。全体的に…

倉知 淳 『幻獣遁走曲』

表紙のフクロウ人間が印象的な本書。小柄で童顔で年齢不詳(でも、実は結構年がいっている)の猫丸先輩は、いろんな仕事をします。治験、UMAの捜索隊員、ヒーローショーの怪人、はたまた松茸狩りの案内人。そこで起きるささやかな事件を、猫丸先輩がとぼけた…

一條 次郎 『レプリカたちの夜』

第2回新潮ミステリー大賞受賞作 著者の別作品「動物たちのまーまー」の表紙に惹かれ、それならばデビュー作から、ということで手に取ってみました。主人公の往本は、動物のレプリカ工場で品質管理の仕事をしています。 多くの動物たちが絶滅したという世界観…

「時間術大全――人生が本当に変わる「87の時間ワザ」」ジェイク・ナップ (著), ジョン・ゼラツキー (著), 櫻井 祐子 (翻訳)

いつも時間に追われるような日々を過ごしていないでしょうか? 一日を振り返って、何をしていたか思い出せなかったりしないでしょうか?GoogleとYouTubeでそれぞれ多忙な日々を過ごしてきた著者二人が、自分の時間を作るためのテクニックを紹介した本です。 …

服部 文祥『息子と狩猟に』

「サバイバル登山家」という肩書を持つ著者による、山を舞台にした短~中編の2作からなる作品集です。 ちなみに、「サバイバル登山」というのは、ザックの中に食料からテントからすべてを詰め込むいわゆる登山ではなく、オール現地調達の方式の登山を指して…

百田 尚樹 『カエルの楽園』

日本(JAPAN)をもじった、ナパージュというツチガエルたちの楽園の壊滅を通して、日本の環境を寓話仕立てに書いた小説です。 誰を指しているのかやや露骨なところはありますが、さすがの読みやすい文章と、寓話ならではの残酷な表現、そして著者の手による…

山田 悟 『糖質制限の真実』

流行りに流行ってもはや定着した感もある糖質制限。 ひとくちに糖質制限といってもその方法も多岐に渡り、もはやどれを信じればいいのか分からない状況です。さてそんな混乱の極みかつ玉石混合の中、この本は医学的根拠に基づいた健康的な糖質コントロールの…

辻堂 魁『風の市兵衛』

主人たる高松道久が禁じられた相対死(心中)により亡くなったことで、家計的に逼迫していた高松家。 財政の立て直しのために期間限定で雇われたのは、侍ながらも算盤を弾くのが得意な唐木市兵衛です。彼は、美しい未亡人・安曇から、高松家の台所事情を聞き…