雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

永井 路子 『日本夫婦げんか考』

イザナギイザナミの時代から夫婦は喧嘩を繰り返してきました。それは、人間が子供を作り脈々と血を繋いできた歴史から考えると避けようのないことなのでしょう。とはいえ夫婦げんかは、夫婦のありようを如実に示していると言えるのかもしれません。

本書はイザナギイザナミをはじめとし、古代〜江戸におよぶ十七の夫婦げんかについて語られています。犬もくわない夫婦げんか。いやしかし、これがまた面白いのです。単なる痴情と一蹴するのではなく、時代背景・周囲の環境などの機知を含めて語られる夫婦のいさかいはとても、とても興味深く勉強になります。

その中の一遍は、女好きの豊臣秀吉とそれに手を焼く正妻おねねの話。有名な話ですが、おねねに宛てて、織田信長が書いた手紙には、君主でありつつも家臣の家庭環境にも心を配る苦労人じみた姿が浮かび上がってきます。冷酷無比という印象のある織田信長は実は気配りさんだったのか、あるいは、おねねがよほどの傑物だったのか、そこまではわかりませんが、歴史の教科書ではわからない人間性が浮かび上がってきて面白いです。

日本史もこういう枝葉を教えればもっと子供は興味を持つんじゃないかなと思います。

一気読み必至の一冊でした。

永井路子さんは最近になって読みはじめたのですが、文章も読みやすく、周辺知識も丁寧に盛り込んでくれてとても面白いです。(つい先日、お亡くなりになられたというニュースがありました。今後、追えないのは残念ですが、ご冥福をお祈りします)