雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

荻野 慎諧「古生物学者、妖怪を掘る―鵺の正体、鬼の真実」

タイトルの通り、古生物学者である著者が「妖怪」について古生物学的観点から真面目に考察をしてみた、という一冊です。妖怪については門外漢と著者は謙遜していますが、どうしてどうして。妖怪についての造形も深く、読み物としてとても面白いです。分類と…

廣嶋玲子 『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』

選ばれた者だけが客として訪れることのできる駄菓子屋「銭天堂」 他の駄菓子屋にはない奇妙な品揃えのお店は、紅子さんと名乗るふっくりとしたおばさんが一人で切りもりをしています。売っている商品も収録されている順に 型ぬき人魚グミ 猛獣ビスケット ホ…

マシュー・サイド (著)、有枝 春(訳) 『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』

失敗なくして成長なし。失敗とはけっして蓋をすべく臭いものではなく、改善・成長するための重要な糧なのです。 失敗することによる学び 失敗を避けることによる停滞 「小説のようにおもしろい!」という煽り文の通り、失敗にまつわるエピソードの数々はどれ…

松岡 圭祐 『万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ』

シリーズの1、2で完結に至るため、2巻分まとめて読んだ感想を。万能鑑定士という肩書を持つヒロイン凛田莉子がその広範な知識を武器に様々な事件を解決するというストーリーです。1、2巻は連作短編の体をとっています。全てのはじまりは「力士シール」でした…

永井 路子 『日本夫婦げんか考』

イザナギ・イザナミの時代から夫婦は喧嘩を繰り返してきました。それは、人間が子供を作り脈々と血を繋いできた歴史から考えると避けようのないことなのでしょう。とはいえ夫婦げんかは、夫婦のありようを如実に示していると言えるのかもしれません。本書は…

恒川 光太郎 『スタープレイヤー』

チート能力を持っての異世界転移。Web小説界隈ではそういう設定がブームです(でした?)。冴えない人生が一気に華々しいものへと切り替わり、転移先の異世界では思うがままに物事が運び、紛れもなく自分がスターで主人公。異世界での一発逆転です。ご都合主…

今村翔吾『じんかん』

松永弾正秀久。時代小説ファンならば知らない者はないでしょう。 主家を乗っ取り、将軍を弑し、東大寺大仏殿に火をつける、という大悪をやってのけた大悪人として華々しい(?)名を残しています。 しかも、その死も織田信長に反逆し、値打ち物の茶器である…

森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』

森見登美彦はやはりいいなあ、という話。駄目大学生の腐れた青春を描く傑作「四畳半神話大系」の続編的位置付けで書かれた本作。ストーリーの大元は、ヨーロッパ企画という劇団のヒット作品「サマータイムマシン・ブルース」とのことです。元ネタの方は見た…

綾辻行人『Another』

いまさらですが、読んでみました。主人公である榊原恒一は父親の仕事の関係で一年間だけ、祖父母の家のある夜見山で暮らすことになりました。中学校3年生の一年間というなんとも中途半端な転校ですが、その後は元いた中高一貫の東京の進学校に戻れることが決…

朝井リョウ『何者』

就活仲間として対策や情報交換を行う五人の若者の人間模様を描いた作品。 2013年直木賞受賞の本作をようやく読んでみました。物語は五人のうちの一人、二宮拓人目線で語られます。彼は学生劇団の主要メンバーとして活躍していましたが、就活を期に引退してい…

隆慶一郎『影武者徳川家康』

先日、関ヶ原に行ってきました。「兵どもが夢の跡」を思わせる、のどかでとてもよい場所です。 とはいえ、いたるところに関ヶ原の史跡があり、さらに、駅前の観光案内所の武将コインロッカーや電柱に貼られた豆知識等々、自治体単位での観光地化への努力がか…

リディア ケイン (著), ネイト ピーダーセン (著), 福井 久美子 (翻訳)『世にも危険な医療の世界史』

医療の発展は試行錯誤の連続でもあります。かつては正しいと信じられていた説が、効果がないどころか害にさえなりうることもあるのです。 本書はこれまでの人類史で、実際に行われていた医療(現在では意味を持たない)に焦点を当てて、紹介をしたものです。…

伊坂幸太郎『AX』

更新が滞ってしまいました。久しぶりの更新は、これまた久しぶりに読んだ伊坂幸太郎「AX」です。「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズの3作目で、「AX」というタイトルもこれまでに漏れず、昆虫であるカマキリの斧を意味しているとのこ…

田畑 泉『究極の科学的肉体改造メソッド タバタ式トレーニング』

数十秒間で疲労困憊するような運動を、休憩を挟みながら繰り返すことにより身体能力を鍛えるという、有名なトレーニング方法です。 スピードスケートの清水選手が取り入れていることでも有名です。 その手法について、提唱者の田畑博士が手ずから書いた本書…

梅原 大吾 『1日ひとつだけ、強くなる。』

日本で最初のプロゲーマーとしてレジェンド的な存在である梅原大吾による本です。今はe-sportsとしてプロゲーマーという存在は認知されていますが、長く、子供の遊びといった認識をされ続けてきたゲームの世界で食べていくのは大変だったのだろうと思います…

ナ月 (著), 阿部洋一 (イラスト) 『みんなの精通』

買ったきっかけは、私の好きな阿部洋一が挿絵を描いていたからなのですが、しょうもな、と思いつつ一気に読んでしまいました。タイトルの通り、投稿者からの精通の体験談を集めた一冊です。 精通――つまり初めての射精です。それを体験するのは、だいたい小学…

品田 遊 『止まりだしたら走らない』

中央線を舞台にした群像劇です。 特に大きな事件は起こらずに、普通の人が抱える、小さくも微笑ましい事件を丁寧に描写しています。話の軸になるのは、自然科学部所属の都築と、ひとつ上に当たる新渡戸先輩。野外活動のために、彼らは先に行った部長をはじめ…

高野秀行 『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』

辺境ルポライターの高野秀行による食レポです。とはいえ、どんなことにも体当たりで取材をする姿勢は全く変わらず、サブタイトルに「ヤバそうだから食べてみた」とある通り、単に各国の珍しい食べ物を食べるというものではありません。読んでいて思わず顔を…

ズュータン 『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』

タイトルの通り、著者はマルチ商法をめぐる悲劇を体験しています。そして今は、マルチ商法の被害にあった人々にインタビューをして、noteで公開をすることにより、マルチ商法の危険に対する啓蒙活動を行なっているそうです。前半はマルチ商法によってもたら…

北川 恵海 『ちょっと今から人生かえてくる』

もう六年前になりますが、前作「ちょっと今から会社やめてくる」は、かなり話題になりましたね。ブラック企業で心を病んで死を選ぶ直前、ヤマモトと名のる謎の男に助けられて、新しい人生を歩みはじめた青山隆。 そのサイドストーリーともいえる本作は、青山…

馬場 翁 『蜘蛛ですが、なにか?』

マンガ化、アニメ化もして人気のある小説です。いま(?)流行りの転生ものですが、うら若き女子高生の転生先はなんと蜘蛛のモンスターという、転生=チートの定石を外したサバイバルストーリー。 主人公である「私」は、暗い洞窟の中で目を覚ましました。記…

貴志 祐介『天使の囀り』

主人公は、終末期医療に携わる精神科医・北島早苗。 彼女は恋人の高梨に違和感を覚えていました。 それは、作家である高梨が参加した、新聞社主催のアマゾンの調査から帰国後ずっとです。食欲、性欲ともに旺盛になり、そして何よりも、病的なまでに恐れてい…

高野 秀行『間違う力』

辺境作家として、独自の立ち位置を構築した著者。 独自の視点とぶっ飛んだ行動力が魅力の著者が、自分自身の人生哲学について語った本です。全10箇条でまとめられた教訓は、【長期スパンで物事を考えない】だとか【怪しい人にはついていく】だとか、普通に言…

日向 夏 『 薬屋のひとりごと』

コミック化もされ、話題になっていた作品。 なかなか手を出す機会がなかったのですが、ようやく読んでみました。 中国の後宮をモデルにしたらしき場所が舞台です。 主人公の猫猫(マオマオ)は、そこで働く下女です。とはいえ、望んでやってきたわけではなく…

高江洲 敦 『事件現場清掃人 死と生を看取る者』

孤独死は遺体が長時間発見されることなく部屋に放置されることが少なくありません。その場合、腐りはじめた遺体から体液が流れ出て、腐敗臭が部屋中に充満することになります。 このような状態になった部屋を人が再び住めるように清掃する、それが「特殊清掃…

丸山くがね『オーバーロード1 不死者の王』

近未来、あたかも現実のように仮想世界でプレイできるオープンワールドゲーム、ユグドラシル。 多くのプレイヤーを抱え、栄華を誇ったゲームのサービス停止が目前に迫っていました。そんな中、かつて最強の一角を担ったギルド、アインズ・オール・ゴウンのギ…

赤松 利市『藻屑蟹』

大藪春彦新人賞受賞作。 福島原発の除染作業員をテーマにした作品で、著者自身も除染作業員をしていたそうです。 主人公の木島雄介は、福島のとある寂れた街で生まれ、そしてそのまま人生を終えるのだと半ば諦めたような日々を送っていました。ある日、大地…

羽根田 治 『 ドキュメント 気象遭難』

「山岳遭難」に引き続いて、ヤマケイの遭難関連の記録です。 タイトルの通り、今回は気象を原因として生じた遭難をテーマにしたものです。一口に気象と言っても、よく想像するような吹雪によるものだけではありません。気温の低下、落雷、あるいは突風による…

羽根田 治『十大事故から読み解く 山岳遭難の傷痕』

山岳ブームと言われて久しい昨今。コロナ下という状況もあり、アウトドアが人気という話もよく聞きます。しかし当然ながら、山には危険がつきものです。 道迷いや滑落、あるいは悪天候による低体温など、様々な事故が起こりえます。危険を認識していない人も…

アンデシュ・ハンセン (著), 久山 葉子 (翻訳)『スマホ脳』

スマホ依存症、SNS依存症。近年のテクノロジーの発展は目を見張るものがありますが、と同時に、その便利さゆえに片時もスマホを手放せず、一時間に何度もSNSのチェックを欠かせないなど、スマホに生活を縛られているような人間が多いことも事実です。 本書は…