アンデシュ・ハンセン (著), 久山 葉子 (翻訳)『スマホ脳』
近年のテクノロジーの発展は目を見張るものがありますが、と同時に、その便利さゆえに片時もスマホを手放せず、一時間に何度もSNSのチェックを欠かせないなど、スマホに生活を縛られているような人間が多いことも事実です。
本書は、生活の全てがほんの小さな機械で済ませられるようになった現代において、その危険性について警鐘を鳴らしているのです。
こんなに便利なのになぜでしょうか。
人間の脳は、情報過多なデジタル社会に適用できていないというのが本書の趣旨です。
そもそも、人間はサバンナなど周囲に危険がいっぱいなところで生き延びるように脳を進化させてきました。生き延びるためには、小さな情報を取りこぼしてはならないし、ネガティブな情報に対しては、最悪を想定して闘争もしくは逃走のために全身を緊張状態においていなければなりません。
でなければ、人類は生き残ることができなかったのであり、そのように脳を進化させた人類の子孫が我々現代に生きる人間なのです。
なので、私たちは情報に対して貪欲です。
体の構造として新しい情報を得ることに報酬(=快楽)を与えるようにできているのです。
特に入手した情報がネガティブなものであれば、最悪を想定して落ち込んだり、攻撃的になったりと、感情を動かされてしまいます。
それは、人類が生き延びるための進化によるもの。かつては不可欠で有利に働いたメカニズムです。
しかし現代、インターネット上に生死に関わる情報がどれほどあるでしょうか。本能の望むままに、無為な情報を収集し、己を余計なストレス下に置くことに意味があるのでしょうか。
とある実験で、スマホを机上に置いた状態と、スマホを別の部屋に置いた状態とで、机上に置いた場合に集中力が低下していたという話がありました。スマホを開いているわけではありません。ただ、視界に入る場所にあっただけで、私たちの意識に作用してしまうのだそうです。
なんという恐ろしい小さい箱。
今や、スマホなしでの生活を送ることは不可能な社会になっています。
でもだからこそ、スマホのない時間を送ることも重要なのかもしれません。
私もスマホ依存の自覚がありますので、少しずつでもスマホ断食に取り組んでみようと思います。
- 作者:アンデシュ・ハンセン
- 発売日: 2020/11/18
- メディア: 新書