廣嶋玲子 『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』
選ばれた者だけが客として訪れることのできる駄菓子屋「銭天堂」
他の駄菓子屋にはない奇妙な品揃えのお店は、紅子さんと名乗るふっくりとしたおばさんが一人で切りもりをしています。
売っている商品も収録されている順に
- 型ぬき人魚グミ
- 猛獣ビスケット
- ホーンテッドアイス
- 釣り鯛焼き
- クリスマスボンボン
- クッキングツリー
と奇妙なものばかり。例えば、人魚グミは食べるとまるで人魚のように水の中を自由に泳げるようになる不思議な力を持っています。紅子さんがおすすめする商品は、どれも客のこどもの今の悩みを見事に解決してくれるようなものばかりで、それに駄菓子だけあってとても値段も安いのです。
子どもは飛びつくように購入して、その不思議な力を堪能します。
しかし、こういう不思議な力の常として、禁止事項とそれに伴う副作用が存在します。例によって例のごとく、禁止事項を破ってしまって……
アニメ化されたり、書店でよく見かけるので気になって読んでみました。ジャンルが児童小説ということもあって、登場人物はほとんど小学生で、副作用の効果もそれほどキツくなく、取り返しのつくものが多い印象です。
ライトなわらうせえるすまん、といった感じでしょうか(あるいは、ダークなドラえもん?)。ふっくらした紅子さんの容貌といい、意識していそうな気がします。笑うせえるすまんは、紛れもなくこの世界に入り込んだ悪魔という感じですが、紅子さんはもう少し曖昧な、どっちつかずの存在ですね。いい子にはちゃんと救いの手を差し伸べてくれます。
一話一話も短く、破滅的な話はなく安心して読める小説でした。こういうの、子どもは好きですよね。