雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

リディア ケイン (著), ネイト ピーダーセン (著), 福井 久美子 (翻訳)『世にも危険な医療の世界史』

医療の発展は試行錯誤の連続でもあります。かつては正しいと信じられていた説が、効果がないどころか害にさえなりうることもあるのです。
本書はこれまでの人類史で、実際に行われていた医療(現在では意味を持たない)に焦点を当てて、紹介をしたものです。

  • 体の毒素を排出するために水銀を服用する
  • 美しくなるためにヒ素を飲む
  • 子供の夜泣きを治すためにアヘンを与える

こんなことが実際に行われ、当時は正しいと信じられていたのです。現在の常識に当てはめてみると、これらの恐ろしいこと、おぞましいこと。

全28章からなる短いテーマの集合になっていますので、怖いもの見たさで興味のあるテーマを読んでみるのもいいかもしれません。

本書は信仰が医療に大きく作用していた中世の医療のほか、脳の一部を削除することにより、精神疾患を治療するという「ロボトミー手術」についても言及しています。

読んでいて恐ろしさに眉を顰めること間違いないですが、痛ましいのは、利かん坊だったり手に負えなかったりした子供に対してロボトミー手術が行われたこと。その例として、やんちゃゆえに継母にロボトミー手術を行われた子供があげられていました。(フリーマンとは当時のロボトミー手術の権威だった医者の名前です)

四人の精神科医が、治療が必要なのは継母の方だと診断したが、結局継母は、フリーマンを説得して少年のロボトミー手術を執刀させた。

笑いごとではないのですが、全くその通りと思わざるをえません。

今後、さらに医療が発達して、現在の治療方法が前時代の医療としてあげられる未来が来るかもしれません。しかし、少なくとも、昔に生まれなくてよかったと、抜歯を経験した個人としては思います。