高野秀行 『辺境メシ ヤバそうだから食べてみた』
とはいえ、どんなことにも体当たりで取材をする姿勢は全く変わらず、サブタイトルに「ヤバそうだから食べてみた」とある通り、単に各国の珍しい食べ物を食べるというものではありません。読んでいて思わず顔を顰めてしまうようなゲテモノを、臆せず、というよりもむしろゲテモノだからこそ積極的に味わってみる、という恐ろしいまでの行動力と恐れ知らずの姿勢で書かれた90近くの品々。
広い意味では食レポです。
にもかかわらず、食べてみたいというものが数えるほどしかないという凄まじさ。
例を挙げるなら
- ゴリラの肉
- サルの脳味噌
- カエルのジュース
- タランチュラの素揚げ 等々
食べなければ死ぬ、くらいの極限に達しないと私は決して口に入れないであろうものを、進んで(時には好んで)食す様はもはや呆れるどこか、尊敬さえしてしまいます。
ゲテモノに慣れすぎて、調理前の状態で見せられた昆虫(「あなたたちは今からこんなものを食べるんですよー」的なサービスと思われます)を、「うん、こんなものなのか」と拍子抜けしつつ食べてしまい、逆に店の人をびっくりさせてしまったというエピソードはもはやご愛嬌といったところでしょうか。
こなれた文章でさらりと書かれていますので、読みやすく、非常に面白いです。
とはいえ、この話はちょっと引いてしまいました。
ここでの胎盤は人間のものです。赤ちゃんと一緒に出てくるそうですが、【どうしても食べたく】なる、という思考回路はどうなっているのでしょうか。
しかし、未知の世界を読むときは、常識を超えたぶっ飛んだ考えであればあるほど、知らない世界を見ることができます。
私たちの決して入り込むことのできない世界を、ぶっ飛んだ感性で飛び込んでいってくれる人がいる、ということに感謝して、面白く読むのが正解なのでしょう。