雑食こけしの読書録

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高野 秀行『謎のアジア納豆  ―そして帰ってきた〈日本納豆〉―』

日本人が独自の文化として認識し、ある意味誇りのようなものさえも抱いている納豆。
しかし、実はアジア各地で納豆は広く食べられているそうです。

では、日本と他の地域で食べられている納豆との違いは何なのか? そもそも、納豆の定義とは? という唐突な疑問に駆られて、納豆の謎を探るべく各地へ飛んだ著者は、深く粘りつく納豆の世界へと足を踏み入れてしまうのです。

アジアの各地といっても、メジャーなところではありません。
秘境辺境どんとこいで、著者は体当たりの取材を敢行していくのです。

納豆で文化を見る、という切り口も面白いですが、著者の納豆へ対する飽くなき好奇心は、純粋な紀行文としても十分に楽しめます。
噂でしか知らない【竹納豆】を求めて市内を駆け回り、現地の家庭にお邪魔して納豆料理を教わり、あるいは元・首狩り族の集落を訪問するのです。

このフットワークの軽さは、これぞノンフィクション作家というところなのでしょうか。

こういう一般の人ではどうにも手を出せないことに、果敢にアタックして報告してくれるというのは、ルポタージュとしてあるべき姿だと思います。
見たことのない世界を覗き見るようで、とても面白いです。

国内の納豆製造者や研究者に取材をしたりして、納豆に関する知識もはさまれていて、それがまた興味深いです。
たとえば納豆菌は、使い続けていると粘らなくなってくるそうで、その理由が以下だそうです。
活発に増殖を繰り返すほど、発生確率が上がるらしいです。

【実は納豆菌には動きやすい遺伝子があり、その遺伝子がある場所にはまると糸を引かなくなる。突然変異の一種だ。】


そしてまた、著者は納豆を食べるだけでは飽き足らず、なんと自作をしてしまうのです。
しかも、アジア納豆では藁以外の葉を使って発酵させていたということで、使えそうな葉っぱ(笹とかビワとか)を使って試作+試食。
自作の発酵食品に抵抗のある私にとっては、もはや何が何だか。
(しかも、そのうちのひとつはどうやら普通に腐っていた模様)