高野 秀行『間違う力』
辺境作家として、独自の立ち位置を構築した著者。
独自の視点とぶっ飛んだ行動力が魅力の著者が、自分自身の人生哲学について語った本です。
全10箇条でまとめられた教訓は、【長期スパンで物事を考えない】だとか【怪しい人にはついていく】だとか、普通に言われることとは反対のものばかり。
それって単に奇をてらっているだけじゃないの? と思うかもしれませんが、この著者は有言実行。常人の認識とは正反対のことをがんがんやってしまうのです。
「怪しい人にはついていく」にしても、親切な(に見えた)若い男性に騙されてパスポートを含む貴重品を全て奪われたり、偽警官に現金を巻き上げられたり、美女と修羅場を繰り広げたり等々、なかなか危険な橋をわたっています。
しかし、それでも懲りずにめげずに「怪しい人に」ついていった結果として、キーパーソンとなる人物と偶然に知り合えたりもするのです。
驚くべく行動力と精神力です。
著者のルポを読んでも、危ない橋を渡りまくっていることが多々あります。
ただ、それがまた面白いのです。
正攻法を取らず、間違いながら、それがいつの間にか花開いたというのが正直なところでしょう。
この奇をてらったような項目には、いずれも著者の信念を読み取ることができます。
特に【合理的に奇跡を狙う】と題された項目では、その行動原理が如実に現れているように思いました。
ネッシーでもウモッカでもいいが、とにかく「夢(ロマン)」といった瞬間に人はそれを現実から「夢(ロマン)」の領域に追いやってしまうのだ。
夢を夢と片付けずに、実現可能なこととして大真面目に追いかける。
それが、著者のルポの面白さの根源なのかもしれません。