雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

一條 次郎 『レプリカたちの夜』

第2回新潮ミステリー大賞受賞作
著者の別作品「動物たちのまーまー」の表紙に惹かれ、それならばデビュー作から、ということで手に取ってみました。

主人公の往本は、動物のレプリカ工場で品質管理の仕事をしています。
多くの動物たちが絶滅したという世界観では、動物のレプリカはそれなりに需要があるみたいなのです。
ある夜、往本は工場でレプリカではない、動くシロクマを目撃します。
そのシロクマの正体は何なのか、往本は工場長からその正体を探るように命令を受けて、調査を開始するのですが、事態は不合理不条理な世界へと入っていくことになるのです。

うーん、どういう話なのか説明が難しい。
これはミステリーというよりも、純文学のくくりに入れちゃった方がいいのではないだろうか、と思います。
解説で、安部公房を彷彿させるといった記述がありましたが、確かにこの不条理な世界観は通じるものがあります。

とはいえ、いかんせん、筆力が足りていない+狙いすぎ感が否めません。
老け顔の同期・粒山フサオ、毒舌の女性従業員・うみみず未波というネーミングセンスもそうですし、粒山を描写したシーンもそうです。
私の読解力も一因かもしれませんが、この短い文がすっきりと呑み込めませんでした。

外見が四十すぎで、実年齢はおそらく二十代ということなのでしょうが、ちょっと混乱します。


【同い年だというが、髪の毛が薄いせいか、往本よりもだいぶ年上にみえた。四十すぎだろうか。そのわりにはどこか頼りない雰囲気があった。】


センスの良い(多分)洋楽をちょこちょこ使ってくるのは、村上春樹伊坂幸太郎を思わせます。
なんだか、自分の好きな作家の特徴を寄せ集めてきたような。
そこに自分の哲学的な思考を埋め込んでいるので、なんだかまとまりがつかない状況に陥っている印象を受けました。

もう少したてばこなれてくるのでしょうかねえ。
正直、私はいまいちでした。


レプリカたちの夜 (新潮文庫)

レプリカたちの夜 (新潮文庫)