雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

倉知 淳 『幻獣遁走曲』

表紙のフクロウ人間が印象的な本書。

小柄で童顔で年齢不詳(でも、実は結構年がいっている)の猫丸先輩は、いろんな仕事をします。治験、UMAの捜索隊員、ヒーローショーの怪人、はたまた松茸狩りの案内人。

そこで起きるささやかな事件を、猫丸先輩がとぼけた感じで解決していく短編集です。
殺人事件みたいな物騒なことはこの世界では起きませんので、安心して読んでいくことができます。


【「えーと、どうしましょう」
  きょとんとした顔で、猫丸は云った。
  遠くの山でカラスがかあと鳴いた。】


探偵役がこんな感じですので、全体の雰囲気も推して測るべしといいますか、なんといいますか。

それもあって、謎解きの理由が少し弱いかなあという印象です。
もっとがっつり本格派の謎解きだったらそれ以外にない、という納得ができるのですが、どうにも腑に落ちない部分があったりして。

ですが、もしかするとそこも狙いなのかもしれませんね。
日常(とは少しずれていますが)に実際に起こるささやかな事件は、白黒ではっきり判断できるものではなく、曖昧さを残しています。犯人含め誰が悪いわけでもないその曖昧さを楽しむものなのかもしれません。


幻獣遁走曲【新版】 (創元推理文庫)

幻獣遁走曲【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者:倉知 淳
  • 発売日: 2019/05/31
  • メディア: 文庫