雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

貴志 祐介『天使の囀り』

主人公は、終末期医療に携わる精神科医・北島早苗。
彼女は恋人の高梨に違和感を覚えていました。
それは、作家である高梨が参加した、新聞社主催のアマゾンの調査から帰国後ずっとです。

食欲、性欲ともに旺盛になり、そして何よりも、病的なまでに恐れていた死に憧れる様子さえ見せるようになったのです。
天使の羽ばたきが聞こえる、と語りついには自ら死を選んでしまった高梨。

恋人の変化に疑問を感じ、独自で調査を進める早苗は、アマゾンの調査隊のメンバーが次々に奇妙な死を遂げていることを知ります。
さらに、それが現地の住民から「呪われた場所」とされるアマゾンの奥地で過ごした、とある一夜の出来事が関係しているようだということも。


彼らを死に駆り立てたものは?
彼らの耳にだけ響く天使の羽ばたきとは?
行き着いた先で取った彼女の選択は?


早苗と無気力なフリーターの二つの視点で進められる物語は、得体のしれない不気味さから、徐々にグロテスクな内容へと変わっていきます。
グロいのが苦手な人はやめたほうがいいかもしれません。

最初の高梨のメールしかり、気取った文章が頻出するのが少々鼻につきました。(カッコ内ルビ)
ルビいらんだろと思いますが、英語圏の人の手記、という印象を与えるために必要なのでしょうかね。

まどろみ(ドラウズ)の中で、私は、彼らが羽搏く(フラッピング)のを聞く
彼らは、私の頭の中で囀る(チャープ)


登場人物みんな博学が過ぎる気はしますが、構成はやはりベテラン作家ですね。
冒頭からつながるラストシーンはさすがです。