ズュータン 『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』
タイトルの通り、著者はマルチ商法をめぐる悲劇を体験しています。
そして今は、マルチ商法の被害にあった人々にインタビューをして、noteで公開をすることにより、マルチ商法の危険に対する啓蒙活動を行なっているそうです。
前半はマルチ商法によってもたらされた著者自身の悲劇を、後半は著者が集めたマルチ商法被害者の声を記載しています。
マルチ商法は決して彼岸のことではない
全編を通して著者がひたすらに訴えていることは、これに尽きると思います。
「うまい儲け話がある」「不労所得を得られる」
多くの人が想像するマルチ商法の被害者は、美味しい話に安易に釣られた思慮の足りない人――
そんなところでしょう。
しかしこの本を読むと、マルチ商法の手口がそれよりもはるかに巧妙であることがわかります。
- 自分の居場所が欲しい
- 認められたい
- 褒められたい
そんな思いにつけ込み、マインドセットを変えて、そして、いつの間にかマルチ商法にどっぷりとはめ込んでしまう。
その手法はもはや、宗教と呼んでもいいほどに巧妙で狡猾なものでした。
家庭生活の末期に、著者がわずかな希望を込めて送ったメールに対する妻からの長い長い返信。
これは他人事ながら、背筋がぞっとします。
直接的な怖さではありません。
ただ、人ではない何かが人のふりをしているような。
何かが愛する妻の振りをして、夫を気遣うふりをしている。
【僕の妻は死んだのだ
と、著者が思うのもさもありなん。
元々ネットで公開されていたということもあり、非常に読みやすいです。
被害者をなくすために、被害者にならないために、読んでおいた方が良いと思いました。