草野 原々 『最後にして最初のアイドル』
この可愛らしい表紙につられて購入した人は後悔するかもしれません。
早川書房なので、SFだろうとは思っていましたが、初音ミク的なものを想像していたのに対して、なんじゃこれはとんでもない(誉め言葉)。
主人公はアイドルにあこがれる普通の少女、古月みか。夢を追い続けた彼女は、最後には夢破れて死を選びます。
しかし、親友にして古月みかの熱狂的なファンである、新園眞織が彼女を簡単に死なせてはくれませんでした。
遺族にも無断で保存した彼女の脳を使い、様々な臓器で構成された新時代のアイドルとして蘇らせるのです。
環境異常により荒廃した世界で、古月みかはアイドル活動(という名の捕食活動)にいそしむことになるのです。
アイドルにはファンが不可欠、ということで、彼女?はこんなこともしたりします。
【今回の計画は、従来の進化のメカニズムと全く同じことをしようとするものであった。すなわち、意識的な行動をするイソギンチャクを保護し、意識的でない行動をするイソギンチャクをぶち殺すのだ。】
つまり、彼女のファンになりえないイソギンチャクをぶち殺すということです。
訳が分からなくて、グロテスクで、この手の話は人を選ぶだろうなと思います。
でも一方で、こういうぶっ飛んだ話を書けるのは一種の才能ではないでしょうか。
同時収録されている、ソシャゲのガチャをテーマにした作品「エヴォリューションがーるず」も面白かったです。
収録されている話は基本的に臓物を露出した生き物が、宇宙の神秘にたどり着くというストーリーラインですが、しかし、それにしてもトリッキーなアプローチですね。
- 作者:草野 原々
- 発売日: 2018/01/24
- メディア: 文庫