冲方 丁『マルドゥック・アノニマス 5』
待ち望んでいた新刊です。
囚われの身になっていたウフコックを救い出したバロットは、ようやく会いたくて会いたくて仕方がなかった愛しいネズミとのパートナー関係を再開しました。
規格外すぎる一人と一匹の快進撃は相手がくそ野郎であればあるほど小気味よいです。
今巻は回想が多めの感じですね。
シリーズ第一作の「マルドゥック・スクランブル」では、自分の殻に囚われていた姫バロットを王子様よろしく助け出してくれたウフコック。
今作では、身を守るために殻へと変身[ターン]していたウフコックを救出するバロット。
出会った頃とは完全に立場が逆転したパートナー関係です。
バロットの成長を様々なエピソードから描き、何が彼女を強くしたのか、彼女はどう強くなったのか、を丁寧に描いています。
バロット陣営の状況と、敵対するハンター陣営の状況を整理するという趣の巻でもあるのかもしれません。
とはいえ、だいぶ状況は混迷を極め、そろそろ終わりの時が近いのではないかという予感も……
同じ思考・目的を持つ者たちから構成される(でなければ能力によって強制的にそうする)ハンター陣営に、野心を持ったいかれた集団がやってきたことから、雪崩式に均衡が崩れはじめているのです。
こいつらがまた、同情の余地もないやつらなので、遠慮なしにぶちかましてほしいものです。
ストーリーそのものはさほど進んでいないですので、また一年ほど生殺し状態でしょうか。
ああ、待ち遠しい。
- 作者:丁, 冲方
- 発売日: 2020/05/26
- メディア: 新書