雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

白鷺 あおい『ぬばたまおろち、しらたまおろち』

創元ファンタジイ新人賞の優秀賞受賞作(第2回)とのこと。

岡山の田舎の村で暮らす深瀬綾乃には、四年前に事故で両親を失ったという過去があります。
育ての親にも内緒の彼女の秘密、それは、白蛇(というより大蛇)のアロウの存在。

綾乃が岡山で暮らすようになって以降、毎日のように綾乃はアロウと一緒の時間を過ごしています。綾乃にとってアロウはかけがえのない友人です。とはいえ、アロウは綾乃と友人以上の関係になりたいという希望を抱いているようで……

さてさてそんな折、東京(筑波)から一人の女性がやってきます。大原由希恵と名のるその女性は、民俗学の研究のためにやってきた、真っ白い肌の美女。彼女は綾乃の暮らす角田村に伝わる伝承の調査にやってきたのだといいます。
天真爛漫で都会的な大原先生の存在に色めき立つ村の男衆。しかしその正体はなんと、魔女かつ雪女だったのです。箒にまたがり、綾乃のピンチに颯爽と駆けつけます。

大原先生の出身は、筑波にある魔女養成学校(外向きは違いますが)で、角田村に来た本当の目的は、綾乃のその学校へのスカウトだったのです。
アロウの助言もあり、岡山を出ることに決めた綾乃は、妖怪のご子息たちに混ざって新しい学園生活を送ることになりますが――

最後の最後でのどんでん返しが楽しい、爽やかな青春小説です。
日本版ハリーポッターとのうたい文句もありましたが、本作はまだまだ導入編。
綾乃の学園生活を楽しみたいならば、続編以降でしょうか。


しかし、妖怪が当然のように生活する世界観だともっと初めに言ってほしかったなあ。
それならば、序盤で綾乃に襲いかかったアロウもにこやかな笑顔で流したのに。「こいつはとんでもないやべえ蛇だ」と思ってしまいました。