雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

京極 夏彦 (翻訳), 東 雅夫 (編集)『稲生物怪録』

百本のろうそくを前に、怖い話をひとつするたびに1本ずつろうそくを吹き消す。
百話目が終わって真っ暗になったとき、不思議なことが起きる。

有名な話ですが、実際にやってみた人はあまりいないのではないでしょうか。

主人公は、度胸試しとしてこの百物語をよりによっていわくつきの岩の上で行った平太郎なる豪傑。
当然の帰結として彼は、一月に渡り化物たちの訪問を受けることになってしまします。

この本はその記録を綴った文書です。


前半は平太郎のもとに現れた物の怪たちの姿を描いた絵巻集、後半は京極夏彦訳の物語の、大きく二部構成となっています。
物語部分はちょっととっつきにくいかなと思いきや、さすがの京極夏彦、実に読みやすい。

一話一話は短くてシンプルなのですが、バリエーション豊かで日本的な怪異は読んでいて飽きません。
それにしても、見舞いに来た友人たちが一晩で逃げ出すほどの怪異を、平然とやりすごす平太郎の豪胆なこと。怪異のどことないユーモラスさがまた、良い味を出しています。

各物語は読んだ記憶があるものもありますが、最後はこういう終わりとは知りませんでした。
この終わりもなんとなく日本っぽさがあって私は好きです。
(バッドエンドではないので、安心してください)

びっくりしたのは、これが書かれたのが江戸も中期(?)の1749年ということ。
鎖国の真っ只中とはいえ、割と文明開化も近い時代、まだまだ怪異と隣り合わせの日常だったのですね。


稲生物怪録 (角川ソフィア文庫)

稲生物怪録 (角川ソフィア文庫)

  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: 文庫