雑食こけしの読書録

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高橋 葉介『師匠と弟子』

漫画家で誰が一番好き? と聞かれたら、私は高橋葉介と答えます。
毛筆で書いているという耽美な絵柄は、実に私好みなのです。

さて、本作は不思議な力を持つ男(師匠)の元に預けられた、少年(弟子)を主人公とした話です。
少年は裕福な家に生まれましたが、妻の不義の子として、体の良い厄介払いという感じです。幸いにも、というよりも必然的に不思議な能力に長けていた少年は師匠の下で修業に励むことになります。
師匠へ持ち込まれる様々な厄介ごとは全て、異形のものたちにまつわる事件で、普通の人にはとても手に負えないものばかり。

しかししかし、師匠は最強なのです。
修行中の弟子がピンチになったり、とんでもないミスをしでかしたりしても、師匠は全てお見通しで、必ず助けに来てくれるのです。

涼やかな師匠も魅力的ですが、なによりも、大人になった手の目が美しい。「もののけ草子」で主人公を張ったかわいらしいヒロインはすっかり大人の女性に変貌していました。高橋葉介は、あだっぽい美女を描くのが非常にうまいです。
この世と異界の境目でバーを営む手の目は、そこで人と異形のものたちの交通整理をしながら、ただただ思い人を待ち続けるのです。

きっと会えると信じながらも、長い長い月日に飽いてしまった手の目のアンニュイな表情はたまらない色気です。しかし、彼女の思い人はおそらく師匠以上の超人です。待たされるでしょうが、いずれは会えるに決まっています。

という感じで、高橋葉介はちょいちょいスター制度を取り入れていますので、懐かしのキャラクターに会えたり、ファンにはたまりません。
高橋葉介の耽美な沼ははまったら抜け出せないので、要注意です。

師匠と弟子(上) (ぶんか社コミックス)

師匠と弟子(上) (ぶんか社コミックス)

  • 作者:高橋葉介
  • 発売日: 2019/03/09
  • メディア: コミック