雑食こけしの読書録

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塙亘之、中村計『言い訳 関西芸人はなぜM-1で勝てないのか』

実力派漫才コンビとして確固たる地位を築いているナイツですが、意外にも、彼らはM-1での優勝経験はありません。
何度も挑戦しては優勝に手が届かずに終わる。それでも挑戦し続けたM-1への思いと、漫才への思いがあふれたインタビュー形式の本です。

全体的に感じるのは、ナイツ塙亘之のM-1と漫才に対する熱い思い。
いかに彼(ら)が真剣に向き合ってきたのかを感じられて、プロというのはこういうものなのだ、と納得させられます。

受けるためには、笑いを取るためにはどうすればいいのかを試行錯誤しながら、独自のスタイルを作り上げた今だからこそ、他の試行錯誤の真っただ中にいる若手芸人の苦しみ・悩みを冷静な目で感じ取れるのだと思います。M-1を見ていると、もちろん面白い芸人もいればつまらない芸人もいます。受けたり滑ったりの芸人もいます。
視聴者側からすると、面白いつまらんで済ませてしまうところを、なぜ面白いのか、なぜつまらないのかを、プロの目できちんと分析をしているところが非常に興味深いです。

芸に対する真摯な姿勢はこういうところからも読み取ることができます。


【容姿があやしげだと、いきなり「こいつ、ちょっと頭おかしいんで」という振りをするコンビがいますが、それも馬鹿げていると思います。頭がおかしいかどうかは、お客さんがネタを見てから判断することなので。】


確かにこういうコンビはたくさんいる気がします。ある意味、生まれ持った才能(容姿)にあぐらをかいているということなのでしょうか。

と、こう書いていても、ナイツはM-1で優勝できなかった事実は変わりません。
しかし、出場資格を失い、審査員の側に立つようになった今も、ナイツ塙亘之のM-1に対する思いは変わっていないようです。
あの時こうすればよかったのではないか、こうすれば勝てるのではないか、今もなお考え続けた「言い訳」が本書です。

どんな業界・職種でもプロの話は実に面白いです。
熱い思いに裏付けられた漫才をこれからも楽しませてもらいます。