八島 游舷 『天駆せよ法勝寺-Sogen SF Short Story Prize Edition- 創元SF短編賞受賞作』
創元SF短編賞の受賞作品です。
以前、この作品の話を聞いたことがあって、ずっと読んでみたいなと思っていました。
仏への信仰の力に律せられた世界――すなわち、佛理学[ぶつりがく]による世界がこの話の舞台。
SFとキリスト教を結びつけた話は結構多いと思いますが、これは仏教とSFの融合です。
三十九光年の宇宙の彼方におわす大佛の御開帳に立ち会うため、厳しい修行により佛理学を極めた七人の宇宙僧たちは天駆ける星寺[せいじ]、法勝寺に乗り込み、死出の旅へと向かいます。困難を極める旅路を、彼らは佛理学の力で乗り越えていくのです。
【我が身すべての佛質を佛象へと転換すれば、半径三尺はたちまち涅槃となる】
これは、慧眼という機械僧、つまりロボットが敵対者に向かって自爆をほのめかす発言をした時のものです。
ロボットでさえも信仰心を持ち、僧になる世界観もそうですが、自爆で周囲も吹き飛ぶよ、という警告を【涅槃になる】と表現する言葉のセンスがたまりません。
この一文だけでなく、全編を通してこんなちぐはぐな言葉の繰り返しです。
見ようによっては悪ふざけのような設定と言葉ですが、癖になってしまうのが不思議です。
巻末に審査員からの講評があって、仏教とSFを結びつけた著名な作品として半村良の「妖星伝」を挙げていて、たしかにそうだなと思いました。あれも斬新で実に面白い作品でした。
古い作品ですが、古臭さを感じさせないのでおすすめです。
天駆せよ法勝寺-Sogen SF Short Story Prize Edition- 創元SF短編賞受賞作
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