今村 昌弘 『屍人荘の殺人』
かなり前から本屋に平積みにされているのは見ていました、なんとなく表紙が綾辻行人っぽくて、失礼なところ、「パクリかなー」と思って手を伸ばさないでいました。
映画化されるということもあり、ようやく購入。
内容は定番のクローズド・サークルものです。
神紅大学のミステリ愛好会に所属する葉村は、会長で名探偵志望の明智の助手として、振り回されつつもそれなりに充実した日々を送っています。
とある事情から彼らは、著名な探偵である美少女・剣崎比留子と共に映像研究会のサークル合宿に参加することになります。このサークル合宿は、開催に際し、差出人不明の脅迫状が届くという、曰く付きのもの。
もちろん、そんな事実は探偵に憧れる明智にとって、参加の理由になっても不参加の理由にはなりません。
そして、彼らが訪れたのは映画研究会OBの所有する紫湛荘(しじんそう)です。
ここが殺人事件の舞台となるのですが、インターネットの普及した現在、外部との通信手段の途絶えた状況、つまりクローズド・サークルをどうやって作るのか。
この舞台設定が突飛すぎる。
映画のストーリーにも情報が書かれていないので、これはネタバレさせてはいけないものなのでしょうね。
【非常事態に直面してしまった。】
犯人でさえも想像もしていなかった状況。それを表現して、探偵役の少女が口にした言葉です。この前に置かれる修飾文と繋げるとパワーワードすぎて。書きたいけど、書けないもどかしさ。
本書を本格推理とグループ分けすると反発もありそうです。推理のための情報は前もって全て提示されていますので、条件は満たしてはいるものの、色々と特殊すぎる上に、謎解きも禁じ手的なものもありますし。
でも、2番目の殺人のトリックは秀逸です。
まさか「それ」を凶器に使うとは(笑)
面白かったですが、続編を書くのはかなり大変そうだなあ。
- 作者: 今村昌弘
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2019/09/11
- メディア: 文庫
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