雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

宮澤 伊織『裏世界ピクニック2 果ての浜辺のリゾートナイト』

ネットでささやかれる都市伝説――ネットロアを題材にした小説の第二弾です。

主人公である空魚[そらお]は、趣味の廃墟探検の過程で入り込んだ【裏世界】への探検に夢中になっていました。
【裏世界】はネットロアの怪異達が住まう世界で、こっちの世界の常識も物理法則さえも通じない世界です。

危険な怪異たちの存在する【裏世界】で空魚が出会ったのは、【裏世界】で行方不明になった相棒を探しているという美少女鳥子でした。
内気で臆病すぎるほどに慎重な空魚と、快活で行き過ぎるほどに楽観的な鳥子は、互いの欠点を補い合いながら、【裏世界】での探検をつづけていくのです。

第一作で、「きさらぎ駅」から何とか脱出して現実世界に戻ってきた空魚と鳥子は、今もなお取り残されたままの在日米軍の軍人たちを救うために、再び【裏世界】へと入っていくことになります。

ネットで見たことのある怪異が次々と登場するのは、ある意味圧巻です。
第二作目でこう書くのもあれですが、都市伝説に対するこういうアプローチは斬新で面白いです。
著者はライトノベル出身らしく、ノリが軽いところがありますが、この絶望的な世界は軽いノリでないとやっていけないでしょう。

本作では、【裏世界】にまつわる秘密と、鳥子の探し人に関する情報も提示されて、物語が進んでいく感じがあります。

私だったら二度と行きたくない【裏世界】に果敢に挑戦していく彼女たちですが、その体に刻印のようなものを押され、次第に現実と【裏世界】との境界があいまいになっていくようで、不気味さが増していきます。
多分ないとは思いますが、バッドエンドにはなってほしくないです。