雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

香月美夜 (著), 椎名 優 (イラスト)『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」』

最近よく平積みにされているのを目にしていて、「本好き」という単語が気になって手を出してみた本。なるほど、これが話に聞く異世界転生ものなんですね。

主人公である大学生の麗乃は病的なまでの本の虫。図書館司書の就職口を手に入れ、死ぬときは本に囲まれて死にたい!と豪語するほどの本好きです。しかしある日、麗乃は地震で崩れた本に埋もれて命を落としてしまいます。
そして、次に麗乃が目を覚ました時、自分が五歳の病弱な異世界の 少女マリンに転生していることを知るのです。

転生先は、現代日本に比べるとはるかに文明レベルは低く、麗乃にとって悲劇的なことに、本というものが稀少で庶民にはとうてい手の届くものではありませんでした。
本のない生活など耐えられない麗乃。手に入らないのであれば、作ってしまえばいい、ということで、麗乃もといマリンの戦いがはじまるのです。

うん。なるほど、これがいわゆる「なろう小説」というものなのですね。
とりあえず、現代知識と大学生まで生きてきた経験があるのでマリンは無双します。それも全て、「本を作りたい」という自分の欲望のために。ギブアンドテイクの概念がなく、相手を利用するばかりなのは、現代っ子の感覚なのでしょうか。

何よりも、いまいち薄い世界の作りが気になりました。


【「初めて石筆を持った人に 長時間の集中は無理ですから。ちょっと文字を練習したら、次は計算をやらせる。街の見取り図を描かせる。兵士の心得を教える。運動も挟む。そんな感じで一日に色々なことを少しずつ体験させた方が身に付きますよ」】


兵士である父親の同僚の手伝い(!)をするマリンが放ったこのセリフ。五歳の世間知らずの幼女がこんなこと言って、この世界観だと魔女狩りにあいませんかね。

同じなろう小説でも、ダンまちは私の好みにばっちりはまりましたので、個人的にはそれほどなろう小説に偏見はなかったと思いますが、これは……

転生前の主人公が、細身色白マイペースで、面倒見の良い異性の幼なじみがいて、(たぶん)それなりに美形、さらに転生後のマリンの性格を見るに、切れたら怖い。なんか、ネットでよく見る、「普段は大人しい美人って言われる」と公言する自称腐女子っぽいです。一冊読でお腹いっぱいになりました。