幡 大介『大富豪同心』
NHKのドラマになった小説です。
江戸の大富豪・三国屋の「若旦那の末っ子」卯之吉は、末っ子の気楽さから放蕩気ままな暮らしをしていました。
眉目秀麗・有り余る金にものを言わせた粋な遊びは、遊び人の鑑といえるほどです。
しかし、可愛い可愛い孫を思う祖父の徳右衛門から、同心(今でいう警察といったところ?)の株を渡され、まさかの同心としての人生を歩むことになります。
放蕩仲間や遊女たちに顔が広く、また、世間知らずゆえの超然としたたたずまいに、周囲の粗野な同心たちから一目も二目もおかれ、彼に心酔する任侠の親分さえも出てくる始末。
そんなこんなで、世間の荒波をのらりくらりと泳いでいる中、卯之吉は殺人事件に行き当たることに――
非常にライトな読み心地で、さくっと読めてしまいました。
卯之吉は当然の(と思う)ことしかしていないのに、相手が勝手に買いかぶり、彼の仲間が増えていきます。
作者は元々テレビ業界出身ということもあるのか、キャラクター造形が映像にしやすそうな印象を受けました。(実際、ドラマになっているわけですしね)
心優しいイケメン主人公が大活躍なんて、若手俳優がこぞってやりそうだ、なんて思ったり。
読んでいて気づいたのですが、これ、いわゆる転生+俺TUEEEの一種ではないでしょうか。
チートな能力を持った主人公(超大金持ち)が、下賤な同心たちの世界に転生して、これといったことはしていないのにがんがん活躍していく。
転生先を異世界にすれば、あら不思議。
考えてみれば、水戸黄門も下々の世界に降り立った(転生した)チートおじいちゃんみたいな感じですし。
舞台設定が違うとずいぶんと印象が変わるものですね。