雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

小池 龍之介『いま、死んでもいいように 執着を手放す36の智慧』

東大卒の僧侶(当時?)として有名な小池龍之介さんの本です。
コラム連載をまとめたもので、満ち足りた生活を送るための心得が僧侶としての立場から語られています。

著者の人格の点では、賛否両論はあるでしょうが、仏の教えを非常に分かりやすく噛み砕いてありますので、自分の生活や思想を振り返ることができて、面白いです。

仏教が他の宗教と大きく違うのは、仏教の最終目標が不老不死や永遠などではなく、輪廻転生という生まれ変わりの輪の脱却=解脱を目指すというところです。解脱した魂は無になり、苦しみに満ちた世の中から抜け出すことができ、それこそが幸せなのだそうです。
たとえ仏様であってもあくまでも解脱からもっとも近い存在というだけで、場合によっては、人に転生することもあるとのこと。

生きることはすべからく苦である、という思想らしく(個人的解釈です)、なかなか悲観的な宗教ですね。

そのためか、この本で語られるのも、淡々とした生への視点です。

いずれは失われていくものに対して、執着したところで何になるでしょう? という趣旨で書かれたこの一文。さすがは元文学青年というだけあって、詩的で私は好きです。
世俗にまみれた私は、この文を読むと「今を楽しまなきゃ!」「無駄なことをしている時間はない!」なんて思ってしまいますが……


【一秒一秒、一刻一刻、すべてを失い消滅することへと向かって、この命は腐っている。】


しかし、改めて著者のwikiを見てみましたが、波乱万丈な人生を送っていますね。
「解脱寸前」と公言して、路上生活をしていたなんて。しかも、昨年の3月に挫折・還俗。教えよりも、著者のこれまでを読んでみたいくらいです。