冲方 丁 『はなとゆめ』
わりと賛同をもらえるのでは、と思うのですが私これまで、清少納言ってあんまりいいイメージを持っていなかったんですよね。
男勝りで知識をひけらかす鼻持ちならない才女、みたいな。
結局のところ、その印象も藤原道長一族との権力争いに巻き込まれて、敗者の側に回ってしまったからゆえなのかな、というのを読後に感じました。
女房たちにとって主人である中宮定子は女神にも等しい存在で、だから、どんな些細なことであっても彼女に褒められたなら、浮かれ上がってしまうのは、当時としては普通のことなのかもしれない。そして、紙に記すすべを持っているのであれば、書き留めたくなるのも。
【太陽は落日こそが美しい。この言葉も定子に捧げたものであったと私は思う。】
解説文にこんな一文がありました。
中宮定子は権力争いに敗れ、庭木の手入れさえもろくにされていない小さな屋敷で生涯を終えます。いっときは栄華の限りを尽くした身としては、悲惨な最期といっても過言ではありません。
そんな中でも、清少納言は定子に仕えつづけ、彼女の日記には常に【「中宮様はお笑いになった」】などの言葉ばかりで、ネガティブな記述は一切なかったそうです。
作中で、中宮定子の【番人】となることを誓う清少納言。
そばで支えるだけでなく、主の死後もその名誉を守るために書き続ける彼女の姿は、私の清少納言観を変えてしまいました。
歴史というのはやっぱり勝者のためのものなんだなあ。
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/07/23
- メディア: 文庫
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