トレヴァー ノートン(著)、赤根 洋子 (翻訳) 『世にも奇妙な人体実験の歴史』
タイトルはなんだかちょっとゲテモノじみています。
表紙のデザインもおどろおどろしい雰囲気があったりなかったり。
タイトルと表紙から想像するイロモノかつ悪趣味な内容を期待してはいけません。
本書の内容は、医学・科学・技術の発展にその身を賭して貢献した勇敢な人たちの歴史なのです。
【完璧主義者ビールは、ヒルデブラントの下半身をくまなく痛めつけた。】
麻酔の研究を行っていた2人の医学者のエピソードです。
ヒルデブラントは陰毛をむしられ、むこうずねをハンマーで思い切り叩かれても、麻酔のおかげで全く痛みを感じなかったそうです……効果があるうちは。
ブラックユーモアさえ感じられる文章で軽快につづられていますが、現代に生きる我々としては感謝の念を送りたいです。
何しろ、麻酔の技術ができる前の手術は、苦痛に暴れる患者を押さえつけながら行うものだったそうですので。
研究の道を追い求め続けるあまり、自らを実験台にのせた科学者たちは、マッドサイエンティストと言えるかもしれません。
しかし、今ある技術はすべて彼らの払った代償の上に成り立っているのです。
麻酔をかけたうえで歯科治療をしてもらったばかりの今、心から、その勇気と好奇心を讃えたいと思います。
大変面白かったです。
- 作者: トレヴァーノートン,Trevor Norton,赤根洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/11/10
- メディア: 文庫
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