雑食こけしの読書録

読書記録をメインに趣味のことをゆるく書いています

伊坂 幸太郎 『サブマリン』

お待ちかね「チルドレン」の続編です。

メインの登場人物は家裁調査官の陣内と武藤の二人。家裁調査官とは、罪を犯した少年の家庭環境や罪に至る動機などを調査し、更正までの道筋を探すという役割を担っているとのこと(Google調べ)。

二人が担当するのは、無免許運転による事故で無関係の人を死なせてしまった十九歳の少年、棚岡佑真。非行少年が罪のない人を死に至らしめたということで、世間的にもニュースになり、厳罰を望む声の高い事件です。この事件の担当となった武藤は、少年から話を聞いていくうちに、単純な非行少年の起こした事件ではないと気づいていくのです。

最終的には、「悪人を罪を犯す前に殺してしまうのは是か非か」という大きなテーマへとつながっていきます。

とはいえ、なんといってもこのシリーズの最大の魅力は武藤の上司であるところの陣内というキャラにつきます。「チルドレン」から少々歳はとっているものの、その破天荒な性格は健在。
乱暴な口調で、面倒くさそうな態度で、常識人の武藤が躊躇するようなセンシティブな話題にも雑に切り込んでいきます。敵も作りながら、その分味方もどんどん作っていく陣内は「砂漠」の西嶋に並ぶ名キャラクターだと個人的に思っています。


【「おい、おまえたち、怖がるな。俺たちがどうにかするから、近づかないで、学校へ行け。ただ道路に飛び出すなよ。車危ないからな」】


小学生を襲うために刃物を持った男に相対した時の陣内のセリフです。これはかっこいいほうの陣内ですね。とはいえ、このあと「校庭に俺の銅像を作って」という発言もしちゃったりしています。

伊坂幸太郎作品は、勧善懲悪の色が濃くて、伏線回収のためにご都合主義気味なところがあったりしますが、陣内のキャラクターを堪能するためだけでも読む価値ありです。

また続編でないかなあ。

サブマリン (講談社文庫)

サブマリン (講談社文庫)