朱野 帰子 『わたし、定時で帰ります。』

なんともキャッチーなタイトル。
このタイトルを考えた時点で、商業的な成功は確定だったのではないでしょうか。

主人公はweb制作会社に勤務する33歳の東山結衣。彼女は会社の近くにある中華料理店のハッピーアワーに間に合わせるために、定時で帰ることを固く決めていた。だが、彼女の同僚は、「皆勤賞を誇りにする女」「会社に住む男」「ワーママとして男に負けたくない女」「ワーカホリックの男」など、一筋縄ではいかない癖の強い人々。

彼らが主人公の定時退社を阻みます。

そんな中、主人公のチームの上司として新しくやってきた福永がクライアントからとってきた仕事は、どう考えても割に合わない破格の価格。
定時退社を守るための彼女の戦いが始まったーー

主人公が個性豊かな同僚たちを次々と倒し（懐柔）していく様子は、RPGでボスを攻略していくような趣です。

【『深夜対応にてキビシい戦いを強いられたため、十二時に出社します』】

これは「会社に住む男」吾妻からチームに送られてきた連絡の内容です。彼のいう「キビシい戦い」はぶっちゃけやらなくていい仕事、というよりも独断でやってはいけない仕事でした。やり遂げた感さえ出して、こいつめっちゃむかつきます。それでも教育し直そうとする主人公はなんと心が広いのか。

全体的に非常にライトな読み応えで、さくっと読めてしまいます。
勧善懲悪かつ、序盤から結末までのレールが見えている状態で話が展開していくので、好みが分かれるかもしれないです。

いいもんわるもんの区分けが、ステレオタイプレベルできっぱりとされていて、なるほど、ドラマ化されるわけだと思いました。

わたし、定時で帰ります。 (新潮文庫)