冲方 丁 『OUT OF CONTROL』
Kindleの購入ページを探っていて、冲方丁の本を大量に掘り当てたその名残です。
ハードボイルドあり、ホラーあり、時代小説ありの、冲方丁詰め合わせ的な趣のある、全7編の短編小説集です。
精巧なダッチワイフをめぐる異形の情愛を描いた「まあこ」も、自殺したエリートサラリーマンが集めた空の箱を巡る恐怖を描く「箱」もなかなか良かったのですが、「天地明察」の前身にあたる「日本改暦事情」がやっぱり面白かったです。
【「やりおった! 幕府の一員が暦を作った! 武家が天に触れたのだ!」】
数々の挫折を経て、ついに渋川春海の提示した大和暦が採用された時の大老のセリフです。
当時、天皇家の絡む全ての行事は、暦を元にして行われていたため、武家が作った暦が採用されるということは、貴族がいまだに握っていた特権が武士の手に渡るということを意味します。
そんなことができるはずがないと見下されていた武士が、ついに暦を作った。
大げさとも言える大老の喜びの声は積年の悲願を達成したことによるのです。
でも、この【武家が天に触れた】というセリフ回しはたまらないですね。
「天地明察」も面白い小説でしたが、私はこれくらいコンパクトに収まっているほうが好みです。関孝和さんかっこいい。
- 作者: 冲方丁
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/07/20
- メディア: 文庫
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