重松清 『ニワトリは一度だけ飛べる』
主人公は準大手(おそらく)の食品会社三杉産業に勤務する酒井裕介という中堅サラリーマン。
ある日、彼は「イノベーション・ルーム」なる左遷専門の部署に異動を命じられます。
半年の間で四度も人員の総入れ替え(要するに全員退職)が起きている通称「イノ部屋」に今回送り込まれてきたのは、酒井のほか、羽村、中川の三人。
家庭を守るため、なんとしてでも会社にしがみつくことを決意する酒井の元へ、「ニワトリは一度だけ飛べる」という奇妙な件名のメールが届きます。
内容はオズの魔法使いをモチーフにした、酒井らイノ部屋の面々に対する激励。
メールの差出人はどうやら社内の関係者、しかも現幹部に近い位置にいる人間。
ですが、それがいったい誰なのかは分かりません。
エリート意識が抜けない羽村と、何を考えているのかわからない中川、そして「看守」と揶揄される室長の江崎ーー
彼らと過ごすうちに、酒井は会社の抱える重大な秘密を知り、仲間と自分の家族を守るための戦いに身を投じることになっていきます。
さすがは重松清、うまいです。
おじさんたちの青春小説と言った感じでしょうか。
【「バーカ、てめえ、ほんとによお、ほんとによお!」
背中をはずませて駆けていく。】
ラストシーン近く、思いがけない人物(ネタバレになるので自粛)と再開した時の羽村の様子です。
このツンデレめが! っていう感じですね。
酒井と羽村は30半ばの設定なのですが、羽村は精神年齢がだいぶ幼い感じです。
独身貴族を満喫しているからでしょうか。
オズの魔法使いを改めて読んでみたくなりました。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2019/03/07
- メディア: 文庫
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